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大阪地方裁判所 昭和35年(レ)52号 判決

理由

受取人と振出日の点を除き、控訴人が被控訴人主張の約束手形に署名(記名押印)したことは、当事者間に争がない。

甲第一号証(本件約束手形)の受取人欄には被控訴人の氏名が記載されているが、この記載が控訴人によつてなされたことは控訴人の争うところであるから(甲第一号証中当該関係部分につきその成立をも争つているというべきである)、右記載だけをもつて控訴人が本件約束手形を被控訴人に宛てて振出し交付したものと認めることはできない。しかしながら、控訴人が本件約束手形を訴外吉本務にあてて振出したとの控訴人の主張事実は、被控訴人の明らかに争わないところであるからこれを自白したものとみなすべく、これと、本件約束手形の受取人欄における被控訴人の氏名の記載自体及び本件約束手形が被控訴人の手裡にある事実とによると、控訴人は、受取人白地のまま本件約束手形を振出し、訴外吉本に交付し、かつ同人に白地補充権を与え、その後右白地が補充されたものであつて、被控訴人は本件約束手形の正当な所持人であることが認められる(手形法一六条一項。手形に振出の記載だけがあり、裏書の記載がないときも、受取人として記載された者につき手形上の権利の帰属が推定される)。

(以下省略)

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